プリント基板をエッチングで自作する

電子工作でプロトタイピングを行う際、ブレッドボードとジャンパーピンで回路制作をしたり、ユニバーサル基板を用いてはんだ付けを行うなどの手法がありますが、汎用の部品を使ってのプロトタイピングではサイズが大きくなってしまったり手間がかかることが多く、ある一定の段階になると専用に基板を作りたくなるかと思います。

基板製造サービスで制作した例

基板づくりにはいくつかの方法があります。

  1. KiCADなどのPCB設計ソフトで設計しFusionPCB,P板.comなどの製造サービスに依頼する
  2. CNC切削機を使い、生基板をミーリング加工する
  3. レーザー彫刻機を使い、生基板をレーザー加工する
  4. エッチングにより生基板を腐食させて制作する
  5. 導電性インクを使った印刷や手書きで回路を描く
生基板

エッチングによる基板製作

今回はエッチングでプリント基板を自作する方法を紹介します。エッチングとは生基板(積層板の表面に銅箔が貼り付けられたもの。銅張積層板とも言う)の銅箔部分をエッチング液によって腐食させることで必要な回路を残して基板を作る加工法です。エッチングによる基板製作の工程には大きく4つの段階があります。

  1. マスキング処理
  2. エッチング処理
  3. 外形カット・ドリリング加工
  4. フラックス・レジスト処理

マスキング処理

マスキング処理とは銅箔を腐食させる際に基板の導電パターンを残すために、銅箔に腐食液がかからないように保護する工程をいいます。方法はいくつかあり、①レジストペンのようなマーカーで直接回路を描く、②専用のフィルムに回路をコピーし感光基板に転写する、③コピー機に黒印刷した回路をアイロン転写する、④生基板に黒塗装を施しレーザー加工による塗装剥がしを行う。などです。今回は④のレーザー加工にてマスキング処理を行いました。

パターンの設計(IllustratorCC)
レーザー彫刻機「MR.CARVE C2」による加工
加工の様子(音量注意)

エッチング処理

さて本番のエッチング処理についてです。以下を用意しました

ヒーターを温度コントローラに接続します。バットに水を満たしてプラスチックバッグにエッチング液を入れてクリップで留めます。

エッチング処理は液温を40度程度に保つことで効率的に行えます。温度コントローラの数値を40度にセットして起動し安定するまでしばらく待ちます。

液温が安定したら基板をエッチング液に入れて15分ほど待ちます。その間何度か基板を揺すって腐食した銅を拡散させました。

15分で少し腐食残しがあったので合計20分ほど浸けました。取り出すと露出した銅がなくなっています。

奥に見えるのが処理前、手前のものが処理後のものです。うまく処理できました。処理後は水でよく濯ぎます。

外形カット・ドリリング加工

ハンダ付けをするために穴部分はボール盤で1mmのドリル加工をしました。

ドリリング後に塗装を剥がしました。基本的に溶剤系の剥離剤なら何でもいいです。手元にシール剥がしのクリーナーがあったのでこれで剥がしました。

剥離後の様子です。エッチング時間がちょっと長くて少し余計に腐食してしまいました。。でも電気的には問題なく動作しそうです。

フラックス・レジスト処理

銅はすぐ錆びるので処理後は早めにハンダ付け作業をするとよいです。その際にハンダが流れやすくなるようにフラックスを塗ります。(画像の基板は別のエッチング処理したものです。)

ハンダ作業後に余分なフラックスを洗浄剤で取り除きました。

必要に応じてレジスト作業を行ってもよいです。今回は特に必要なかったのでやりませんでした。

これで一連の流れが終わります。興味のある方はぜひ挑戦してみてください。

余談ですがサンハヤトのエッチング液は処理剤も入っているので使用後のエッチング液は適切に処理できて使いやすいのでおすすめです。